「守り」に入ったソフトバンクと「攻め」のドコモ
■ソフトバンクが「守り」に
今回、3社の決算会見を見て感じたのは、ソフトバンクが「守り」に入る一方で、NTTドコモに「攻め」の姿勢が見られたことだ。
孫社長は「収穫期に入った」と明言し、「今期は増収増益の見込み」「3年間でフリーキャッシュフローを1兆円前後確保」「14年度には純有利子負債をゼロに」と公約。純有利子負債をゼロにするまで、大規模な投資は行わないとまで宣言した。
しかも、これまで株主総会で株主から何度となく要求され、頑なに拒んできた「増配」についても、10年3月期に2.5円増配して5円とし、将来のさらなる増配を約束した。
ソフトバンクはボーダフォンの買収により携帯電話事業を手に入れ、中国でもオークションやオンラインショッピング事業を成功に導きつつあるなど、いずれの事業も種まきの時期から刈り取りの段階に進んでいる。
孫社長は「これまでのソフトバンクは借金をして荒っぽい経営というイメージだった。その残存イメージをこれからは変えていく。借金経営からキャッシュフロー経営になっていく」と経営体質の転換を再三、アピールしていた。
■誰も予想しなかったドコモの料金見直し
一方、ここにきて攻めの姿勢を明確に見せだしたのがNTTドコモだ。山田隆持社長体制になって1年弱。「お客様満足度の向上」を目標に掲げてきたが、決算発表に合わせて4月28日に、誰も予想しなかった「料金見直し」を発表した。
パケット料金プラン「パケ・ホーダイダブル」は、これまで1029円から4410円までの2段階の定額制だったが、この下限を1029円から490円に値下げする(5月1日から実施、スマートフォンに適用される「Biz・ホーダイダブル」も同様)。NTTドコモとしては、2008年12月現在で契約率36%にとどまるパケ・ホーダイユーザーを何としても増やしたいのだろう。
従量制プランのユーザーは、このご時勢で毎月「いかにパケットを使わないか」に苦心している。たとえば、「パケットパック10」(昨年末で新規受付は終了)は月額1050円まで無料で、その後はパケット単価が1パケット0.105円。しかし、パケ・ホーダイダブルであれば、とりあえず最低料金が半額以下になる。それなら契約してもいいという気になるはずだ。
ただし、定額制プランに入ってしまうと、つい安心して動画コンテンツなども視聴してしまうもの。結果として、毎月の請求額は上限の4410円に近づいていくことになる
NTTドコモは今夏モデルからiモードコンテンツの画面の一部で動画を再生する「インラインFlash」を導入する。定額制と動画コンテンツの充実という両輪でパケットARPU(1人当たりの月額利用料)の向上を狙っていく。
昨年から今年にかけて、NTTドコモはインドの通信会社やテレビ通販会社に出資したり、イオングループと新会社を立ち上げたりと、モバイルとシナジーのありそうな事業領域に積極的に進出している。13年3月期には営業利益9000億円以上を目指しており、山田社長は今期をそのための「弾を込める時期」と位置づける。
ユーザーの満足度を向上させ「囲い込む」ことで収益の基盤を安定させつつ、料金の見直しで他社との体力勝負に持ち込む。さらに成長しそうな分野への投資を惜しまないのが、攻めに転じたいまのNTTドコモの姿だ。
(日経ネット・モバイル最新ニュース、筆者石川温氏より転載)
■ソフトバンクが「守り」に
今回、3社の決算会見を見て感じたのは、ソフトバンクが「守り」に入る一方で、NTTドコモに「攻め」の姿勢が見られたことだ。
孫社長は「収穫期に入った」と明言し、「今期は増収増益の見込み」「3年間でフリーキャッシュフローを1兆円前後確保」「14年度には純有利子負債をゼロに」と公約。純有利子負債をゼロにするまで、大規模な投資は行わないとまで宣言した。
しかも、これまで株主総会で株主から何度となく要求され、頑なに拒んできた「増配」についても、10年3月期に2.5円増配して5円とし、将来のさらなる増配を約束した。
ソフトバンクはボーダフォンの買収により携帯電話事業を手に入れ、中国でもオークションやオンラインショッピング事業を成功に導きつつあるなど、いずれの事業も種まきの時期から刈り取りの段階に進んでいる。
孫社長は「これまでのソフトバンクは借金をして荒っぽい経営というイメージだった。その残存イメージをこれからは変えていく。借金経営からキャッシュフロー経営になっていく」と経営体質の転換を再三、アピールしていた。
■誰も予想しなかったドコモの料金見直し
一方、ここにきて攻めの姿勢を明確に見せだしたのがNTTドコモだ。山田隆持社長体制になって1年弱。「お客様満足度の向上」を目標に掲げてきたが、決算発表に合わせて4月28日に、誰も予想しなかった「料金見直し」を発表した。
パケット料金プラン「パケ・ホーダイダブル」は、これまで1029円から4410円までの2段階の定額制だったが、この下限を1029円から490円に値下げする(5月1日から実施、スマートフォンに適用される「Biz・ホーダイダブル」も同様)。NTTドコモとしては、2008年12月現在で契約率36%にとどまるパケ・ホーダイユーザーを何としても増やしたいのだろう。
従量制プランのユーザーは、このご時勢で毎月「いかにパケットを使わないか」に苦心している。たとえば、「パケットパック10」(昨年末で新規受付は終了)は月額1050円まで無料で、その後はパケット単価が1パケット0.105円。しかし、パケ・ホーダイダブルであれば、とりあえず最低料金が半額以下になる。それなら契約してもいいという気になるはずだ。
ただし、定額制プランに入ってしまうと、つい安心して動画コンテンツなども視聴してしまうもの。結果として、毎月の請求額は上限の4410円に近づいていくことになる
NTTドコモは今夏モデルからiモードコンテンツの画面の一部で動画を再生する「インラインFlash」を導入する。定額制と動画コンテンツの充実という両輪でパケットARPU(1人当たりの月額利用料)の向上を狙っていく。
昨年から今年にかけて、NTTドコモはインドの通信会社やテレビ通販会社に出資したり、イオングループと新会社を立ち上げたりと、モバイルとシナジーのありそうな事業領域に積極的に進出している。13年3月期には営業利益9000億円以上を目指しており、山田社長は今期をそのための「弾を込める時期」と位置づける。
ユーザーの満足度を向上させ「囲い込む」ことで収益の基盤を安定させつつ、料金の見直しで他社との体力勝負に持ち込む。さらに成長しそうな分野への投資を惜しまないのが、攻めに転じたいまのNTTドコモの姿だ。
(日経ネット・モバイル最新ニュース、筆者石川温氏より転載)
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